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ガレキのことばで語れ

(ゆいっこ花巻:増子義久) 

  「…ことばがないなどとは言うな/ことばで語ることができないならば/ないことばで語れ/ガレキのことばで語れ/ガレキの涙のことばで語れ/そこに遺影がある/ことばの/遺影がある」―。漆黒の闇の奥底から深い悲しみに包まれた嗚咽(おえつ)が漏れ聞こえてくるような、そんな詩編の群れ…。昨年の第26回国民文化祭(2011京都)で文部科学大臣賞を受賞した、花巻詩人クラブ会長の照井良平さん(66)の初めての詩集『ガレキのことばで語れ』(詩人会議出版)が刊行された。

 照井さんは東日本大震災で壊滅的な被害を受けた陸前高田市の出身。親族10人が犠牲になったほか、多くの同級生や幼なじみ、知人を失った。茫然自失の中、突き動かされるようにして書き留めた「ばあさんのせなか」が文部科学大臣賞に輝いた。「少女」「無常」「涙のでない涙」「遺体収容」「丸裸のY君」「無念の渚」…。未発表の20編を含めた31編を収録。朝焼けの中にすっくと立つ「奇跡の一本松」、表紙を飾るこの写真も照井さんが撮影した。

  「三陸の未来に光あれ」―。いわてゆいっこ花巻が今年3月11日、震災1周年の追悼行事を企画した際も照井さんの“震災詩”の朗読が被災者など参加者に大きな感動を与えた。当初、犠牲者やその親族の気持ちを気遣い、詩集としてまとめることにためらいがあった。しかし、震災の記憶の風化が急速に進む中、津波に消えた無告の人々の無念を言葉として遺したいという気持ちがふつふつと湧いてきたという。「それがことばの遺影ということかも知れませんね」と照井さんは言った。

 詩集はA5版のモノクロで126ペ−ジ。1部1,700円。問い合わせや購入申し込みは照井さんのFAX(0198−24−9652)まで。「ガレキのことばで語れ」の全文は以下の通り。
                             
ガレキの前で

ことばがないなどとは言うな

ことばで語ることができないなら

季節の冷たいつぶて

みぞれで凍てつく春のみぞれで語れ

潮風が頬を刺す潮風で語れ

それでもことばが見つからないときは

一人で細い坂道を

安置所に向かう人の背中で語れ

海に手を合わせる少女のことばで語れ

さもなくば助けを絶叫する

夜の海に響き渡る闇の声で語れ

それでもことばがないときは

ことばで語ることができないときは

ガレキの中を歩いて探せ

歩いてヒラヒラ舞う布切れのことばで語れ

崩れた屋根のことばで語れ

歩いて歩いて

異臭を放つ魚のことばで語れ

歩いて目を背けたくなることばで語れ

ガレキの中を歩けば

とげとげしく突き刺すガレキのことばが

容赦なく生き身の身体を

四方八方から襲い

八つ裂きにし

たまらず 傷口が

ふつふつと湧く虚なことばで溢れだす

ところかまわず狂い咲く

そこまで

どっぷりガレキに浸かるまで歩いて探せ

ことばがないなどとは言うな

ことばで語ることができないならば

ないことばで語れ

ガレキのことばで語れ

ガレキの涙のことばで語れ

そこに遺影がある

ことばの

遺影がある


 鹿(しし)踊りの鎮魂の舞をバックに「ばあさんのせなか」を朗読する照井さん=2012年3月11日、震災1周年の追悼行事で(花巻市のなはんプラザ)

 
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